ふていきびん 不定期便 第65号 1995.3.1
ガリしゃなく、WP・コピー版の僕の個人誌
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ひろせ しんじ：
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老人性痴呆症、その②。おやじの入院の時の大騒ぎの話。
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おやじがお袋の面倒を見ている限りは、僕らの直接の問題ではなかった。医者に見せろというのに、未だに見せていないという重大問題はあるげれど。
それが、おやじが入院した、となるとさあ大変。これが、'94.1Oのこと。
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25日(火)、おやじは、バイクでこけて救急車で入院。僕らは、その日の夜、下田へ。重症だけど、命に関わる程ではないでしょう、と医者に言われた。
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で、その時、お袋が一人で居られないということを僕らが判断できなくて、次の日(26,水)の夕方に、一人にして帰って来たのが、間違いの始まり。
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次の日(27,木)「いつ来てくれる?」と電話が3回入った。僕が28日(金)の夜に行く予定だったので、「明日の夜」と答えていた。
そしたら、あちこち電話して、姪に来てもらう話になって、28日の朝6時に姪が来てくれた。
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僕らは、「一人で居られるというから置いて来たのに、人を頼まなければならないのなら、僕らの所に来い。」と言い、お袋は「一人で居られる。」と言い張っていた。
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今、思えば、初めからお袋は一人で生活して居られる状態になかったのに、下田に居たいままに、僕らには一人で居られると言い、僕ら以外の誰かに来て貰おうとしたのだった。
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何故、その事を僕らはその時に分からなかったのか?僕らにも、お袋が前からしたら随分良くなっていると見えたし、一人で居られると主張するし、僕らには希望的な判断があったのだと思う。
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事実として、一人では生活できない、ということを明確に理解するのは大分後のことになる。
(おやじに、今後はどうするのか、と問い詰める手紙を書いていて、僕は、その事に気付いたのだと思う。)
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その時、僕らが判断できなかったのは、老人性痴呆症というものを僕らが理解していなかったからだと思う。
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'93年秋に発症した時から、いくつか本は読んでいた。けれど、体の感じとして分かっていなかったと思う。だから、対応できなかったのだろう。
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今現在は、今度のようなことがあったら、即、お袋を連れてくる、お袋が何と言おうと関係ないと思っている。
けれど、あの時は、お袋を説得しないと連れてこれないと思っていた。何故だろう？(説得する＝正常な判断ができることを前提としている。)
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惚けた人の言葉でも、その人の希望ではあるのだから、できるだけ希望に沿うようにしてあげたいとは思う。しかし、希望を叶えるかどうかは、脇に居る人の判断だ。脇の人の正常な判断を待つしかない。
今度こんなことがあったら、何と言おうと連れてくると、宣言してある。
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けれど、本当に一人で生活できるようになることがあり得ないのだろうか？「あり得る」なら、その為には何をすれ
ば良いのだろうか。
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'94.1Oは、兄が悪役でさんざお袋に言ってくれて、お袋が根負けした所で、僕は何も言わずに連れて来たというもの。
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おやじの入院期間はちょうど1月だった。お袋を辻堂に連れて来てから、お袋を連れて下田までお見舞いに行った回数は3回。十分以上のことをして上げたと思う。
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その後、おやじの退院後の養生に2週間は、2人とも辻堂に居ることになっていた。それを、10日目に「私は帰るから、お父さん1人でここに居なさい。」と言って荷物を持って玄関を出てしまったのだ。
さあ大変！てな、話なのです。
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次の事を考えると、ともかく僕らの近くに移って来て、ひっくり返るのなら、お近くでどうぞ、てなものです。
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誰が面倒を見ると言って「僕が見る」と言っても、本当に仕事をしてくれるのは女房なのです。僕は場所を用意する、と言っても、89平米に8人ではストレスの元です。
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てな訳で、僕の家の裏のアパートが空くのを待っている話の続きはまた次号。